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登校
母が死んだ。
最愛の母だった。
父は幼い頃に既に他界し、今日この日まで女手一人で育ててくれた人だった。
それなのに何故か涙は出ず、当たり前の出来事のように過ぎ去ってしまった。
身寄りのない私を、葬儀場の前を通りかかった、ただそれだけの男が引き取った。
普通に考えればあり得ない状況なのだが、その男、来栖政則はそんな赤の他人である私を、ただ抱き締めて泣いていた。
「お帰り」と奇妙な言葉を呟きながら。
政則の家に住み始めた私は、家から一番近い学校に転校することになった。
丁度後期に入る、クラスに馴染みづらいであろう時期だった。
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