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何の気なしにそう言ったら、斎藤氏はいたく感動した様子で答えてくれた。
「ありがとうございます! そんなふうに言ってくれるなんて優しい方ですね。遅れたおわびもありますし、ここは全部僕がおごります!」
思いもよらずそんな提案を受けて、私は遠慮なくソイラテのおかわりとケーキを頼んだ。ケーキはいちごの載ったレアチーズケーキで、甘すぎることもなく、口当たりの良い、美味しいケーキだった。
斎藤氏はブラックコーヒーだけを頼んで、私がケーキを食べているところを幸せそうに眺めていた。なんとなく気恥ずかしかったけれど、斎藤氏がニコニコしてこちらを見ているものだから、文句は言わずにおいた。
ケーキを食べ終わって、飲み物も飲みほしても、私たちはしばらくカフェに居座っていた。
良い雰囲気の居心地の良い喫茶店だった。出ていくのが名残惜しいと思っていたら。
「さて、次はどこに行きましょうか? デートはまだ始まったばかりですよね?」
「で、デートって……」
「違うんですか? 僕はそのつもりで来ましたけど」
斎藤氏があまりにも無邪気に微笑むから、私はただただうつむくしかできないのだった。
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