丸い窓の向こう側

いっぽめ。

やばい、急がなきゃ。

今から準備したって多少の余裕はあるが、余裕はあればあるほどいい。
何が起きるかわからないのだ、新人は早く来るべきだという先輩がいるかも、電車を間違えるかも。止まる可能性だってあるし。

『備えあれば患いなし』だと思っている。周りは「小心者」「考えすぎ」とからかうけれど、別にそれでいいのだ。損はしない。

それに――知らないところに踏み込むときにはそれなりに準備が必要でしょ。一歩踏み出すって、私にとっては怖すぎる。

ーなるほどな、お前はそんなこと考えてるからなじめないんだよ。

遠い日の、声が聞こえる。