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初日は自己紹介の後、簡単な研修を受けた。翌日からは引継ぎを兼ねたOJTだ。中途入社なんて、誰も待ってはくれない。そんなことは分かっているし、早く慣れたい一心でメモを取りながら必死に食らいつく。
「お待たせ、林さん。またメモまとめてたの?」
トイレに行きたいとコンビニに立ち寄った斎藤さんが、袋を手に提げて戻ってきた。
「入社して半月、ほんとよく頑張ってる。そんな君にご褒美です」
大したものじゃないけど、と運転席に乗り込む斎藤さんは、3歳年上の営業マンだ。ちなみにイケメン。多分、一般的に。
自分の缶コーヒーだけ取り出して、あとは好きなものを取ってと言われて中を見ると、ミルクティーと甘そうなコーヒー、微糖コーヒーにブラックコーヒーが入っている。もちろん全部冷たい。6月の空気はじめっと暑いから。
「たくさん買ってくださったんですね…」
あまり遠慮しすぎても失礼かと、お礼を言いながらミルクティーを取る。
「好み分からなかったし。ミルクティーが好きなんだね」
覚えとくよ、と笑う斎藤さんを、別に覚えなくてもいいのにと思いながら見る。マメだな、これが営業マンか。
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