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神原はママを牽制した。合いの手師と面が割れてからの目付き振る舞いがおかしいと感じていた。
「君、明日はアルコール厳禁だよ」
「あたりきしゃりきは写楽の大見え 飲んで飲んで呑まれて飲んで
アルコールラブコールモーニングコール」
早く帰って寝かせよう、幸い朝はゆっくり寝ていられる。
「いよ、お客はん合いの手師ーやおまへんか。サインもらええまへんか」
運転手がサインをねだる。気持ちよくそれに応えた。神原が睨んでいるが気にしない。
「チャッチャッチャ、チャッチャチャッチャ♪ウオンチュ~」
運転手へのサービスである。山田はノリノリで一日を閉めた。
神原がフロントで名刺を出すと支配人が出てきた。
「会長がお待ちしております」
支配人自らスウィートルームまで案内した。神原も少し緊張していた。会社上げての営業、大阪の一角を崩せるかどうかの正念場でもある。合いの手師は主役でありながら影の存在である。ルール決めや順番に関しては一切口出し無用である。従って主催者とメロディが全てを決定する、そこには同席出来ない。山田は客間で待機する。ひとり掛けのソファーに縦縞のスーツを着た山田と同年代の男が目を閉じて天井を向いている。山田は三人掛けのソファーに座った。
「あんさん、大阪は何度目だっか?」
縦縞スーツは目を閉じたまま山田に訊いた。渋い声に山田は驚いた。
「商用で四度、観光で三度です」
明るい声だ、嫌味や悪口を言っても相手に気にされないタイプの声だと哲は読んだ。きついジョークもさらっと流せる声。哲は目を開けて山田を見た。
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