星街ウオンチュー♪『大阪夏の陣』

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 出発は8月13日、残り二日、今晩からカラオケで歌合せ、クラブ花で営業本番、そして12日に大阪に泊まり場慣れをして13日に本番を迎える。場所はホテル帝国屋のスウィートルームである。 「部長、ひとつ心配が」 「なんだね、報酬はいつものように半分前、残りは後、それとは別に成功報酬をはずむよ」 「ありがとうございます。心配なのは15日に長男が私の誕生パーティーを企画してくれています。この戦が延びることはないでしょうか。どうしてもそのパーティーには出席したいんです」 「それは山田君次第だ。初戦で勝鬨上げれば問題ないじゃないか」  山田にはプレッシャーとなった。戦いはいい、だが正雄の心遣いはどうしても受けたい。洋子と離婚してからずっと家事を賄ってくれている。だからと言って成績が落ちることはない。体育以外は断トツトップを続けている。同級生から『教授』と呼ばれているが最近では先生方もそう呼んでいる。理科の先生が正雄に数式を解いてもらった礼に酒を送って来た。  カラオケで久々の合わせを行い花に出向く。小さな取引だが神原部長が課長に成り立ての時から贔屓にしてくれる客との商談である。既に取引は二人の間で決まっており客を楽しませるだけの顔合わせである。この客は星街合いの手より部長の裏趣味SMに嵌ってしまった典型である。 「山ちゃん、しばらく。心配してたけど案外元気そうでがっかり」  明美が山田の隣に座った。 「何だい、がっかりって。俺は凹まないよ」  山田は水割りグラスを持ち上げたが口につけずにコースターに下ろした。  酒での失敗はこりごりである。 「山田先輩、僕を仕込んでください」  山田の失脚後神原部長のお供になった室井が懇願した。 「室井さんの暗いのよ、なんか場が沈んじゃうの」   明美が渋い顔してはっきり言った。      
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