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マスカラを肩の上で振ってウインクした。大きな拍手が起きた。ショーは終わり神原部長と客はタクシーに乗り込んだ。室井が助手席に乗る。
「あれ、室井君も同行するの?」
室井は頭を掻いて笑った。SMに嵌ったのだ。山田も一度神原に誘われて体験した。初めてだから何も判らないと黒革のパンツが尻に喰い込んだ中年の女に一礼した。
「あんたあたしを打てるかい?」
真っ黒い口を開き赤い舌をちらちらさせて言った。
「いや、女に手を上げたことは一度もありません、たぶん無理」
「あんた奥さんいるのかい?」
「三年前に別れました」
「お風呂は一人で入るのかい?」
「まあ、子供も手が掛からないので」
「それじゃ脱ぎな」
山田はスーツだけを脱いだ。
「素っ裸になるんだよ、このメス豚が」
「いやこれでも雄なんですけど」
「じたばたするんじゃねえよ」
黒パンのおばさんは床を鞭で叩いた。
仕方なく山田は全部脱いだ。意外と几帳面でシャツとパンツを畳んだ。鞭が山田の背中に落とされた。加減をしているのでそれほど痛みはない。
「痛いか、気持ちいいか?ソレッ」
また叩かれた。
「止めてくださいよあなた、そんなことして警察呼びますよ」
「そうか、手錠を嵌めてもらいたいのか、回りくどい言い方しやがって」
また叩かれた。そして手を出せと言われて手を出し手錠を嵌められた。右手と一方はベッドの足。
「舐めろ」
黒パンのおばさんは股間を山田の顔に押し付けた。革の嫌な臭いに吐き気がした。
「ぷあっ、くわっ、洗ってますかこのパンツ」
「そうか臭いのが好きなんだな」
そしてさらに股間を突き出した。
「ほら、臭うだろう、嗅げ、このメス豚が」
おっとり型で、何を言われても我慢出来る男がさすがにこの臭いにはしびれた。股に喰い込んだ革パンに噛み付いた。顔を横に向けると革は伸びて切れた。おばさんは驚いて部屋から逃げた。店の管理人が来た。
「どうもすいませんね、人が足りなくて掃除のおばちゃんに頼んだんですよ。前に成功してるから安心していたんですけどさすがお客さんのようにハードですとまだ務まりませんね。いや失礼しました。お代は要りません」
管理人に手錠を外してもらうときの恥ずかしさが浮かんだ。
「あんまりのめり込むなよ」
室井に耳打ちしてタクシーを走らせた。
桜ノ宮駅で下車した。大阪の空気を感じようとホテルまで歩くことにした。源八橋の中央に立ち止まる。
「ほら大阪城が見えるよ君。そして川沿いに聳えるホテルが戦場だ」
神原も山田も気合が入る。
「部長、それじゃ我等もここに宿泊ですか?」
「違う、そこは経費を掛けない、南に近いビジネスホテルだよ」
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