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「ほなら部長はんがメロディー?」
「大阪には凄い合いの手師がいるね、先日目の当たりにしたよ」
合いの手師と聞いてママの目付きが変わった。神原はそれを察した。夜の営業で得た人の気配を察知する能力である。山田には感じない。
「それじゃ今回の出張は営業を掛けたお仕事ですか?」
ママは山田に向きを変えた。
「ええ、明日の晩『大阪夏の陣』でんがな」
発音の悪い大阪弁で答えた。神原は目配せで情報を漏らさないように伝えたつもりだが山田は中指を突き上げた。山田自身その行為の意味すら知らない。ダイアナママの真似をしただけである。ただカッコいいと感じた。ママは席を離れた。
「合いの手師なんだ、プロ?」
奈央と言う明け透けなホステスが山田に訊いた。
「プロって?私に訊きました?」
神原は山田が酔い始めたのを察した。今晩は大阪の空気を読むための探り、それに安心して飲み過ぎたのである。早番で喉慣らしをしてホテルに戻ることにした。
「ねえ君、星街をリクエストする」
奈央が拍手してセットした。
ママが電話している。
「ねえあんた、あんた明日、営業やない?それもごっつい取引言うて」
「ああそうや、それがどないした?大事な営業や、喉湿布して寝るさかい電話切るで」
電話相手はなんと難波の哲だった。ママの亭主である。
「その営業作戦名は?」
「そんなもんお前が心配せんとき、『大阪夏の陣』じゃ。相手は関東や、太閤殿下の敵討ちや」
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