パーティー

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パーティー

 王国では、パーティーが度々ある。それは、誕生日パーティーだとか、季節を祝うパーティーだとか色々な理由をつけて催しているとも思える。特にパーティーのような大人の社交が苦手なルイザは当然のごとく不機嫌だった。  ボディーガードを頼まれ、アルバイトをしていた俺は、彼女の後をついていく。いつもとは違うアップにした髪型はうなじがあらわになり、女性らしさを醸し出す。空色のドレスに身を包んだルイザはいつもよりもより一層美しいと思えた。裾は床につきそうなほど長く、ハイヒールは歩きづらそうな様子だった。いつも剣術ばかりやっているルイザが女性的なめかしこんだ格好をすることはめったにない。とても珍しいことだった。しかし、彼女への称賛の気持ちを顔に出さないのが俺の主義だ。 「孫にも衣装っていうのかな。結構似合っていると思うぞ」  ルイザに思いを悟られずに一番の理解者になる。そんな皮肉めいたことしか俺の口から出てくることはなかった。静かに彼女のあとをついていく。ボディーガードなのであとをつけるのは仕事だし、友達のように歩いているのはカモフラージュにもなる。  ルイザは会場から出ると、星空の輝く空を見渡せる場所へ行く。そこには誰もいないということをルイザはよく知っていて、自分の逃げ場としてよく利用しているようだった。裏庭が見渡せるその場所は生い茂る草木と空しか見えない。その場所には小さな椅子が何個か並べてあり、彼女はそこに腰かけながら、ため息をついた。 「なんで、こんなことやっているんだろう。全て私には無意味なことだ」  俺は、彼女に同意する。彼女の瞳は死にかけていた。 「毎日王女の務めだなんだと面倒なことばかり押し付けられてかなわない。しかも、近々婚約者と顔合わせらしい。どうでもいいことだがな」 「婚約者?」  俺の心がズキッと音を立てる。 「生まれる前から決まった婚約者がいるんだ。今日はじめて会うんだ」 「まじかよ? でも、まぁちゃんと嫁にもらってくれる人が決まっているならば、一安心だよな」  俺は、頭の後ろに腕を組みながら、自身を納得させようと必死だった。 「金と地位目当ての男はたくさんいるさ」  ルイザの瞳は諦めの交じったさびしそうな瞳だった。 「どんな形でも相手がいるなら、万歳だと思うぞ。特におまえのその女子力で恋に落ちる相手がいるとは思えないしな」  ルイザは俺の顔を睨みつけたが、それ以上何も言わなかった。  俺も、そんなこと言うべきでもないのに、思ってもいない生意気な言動しか口から出てこない。なんて不器用な口なのだろう。自分自身が不甲斐ない。
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