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「待ってっ!...好き...。俺、お前のこと、好きすぎて...どうにかなりそうなんだっ!」
普段から仲がいい2人が珍しく難しい顔をして見つめあっていた昼下がり。
この時間は職員も出歩くことが少ないので、この場を選んだことは良しとしよう。
ただ、問題は一つ。
自分の仕事場が彼らの立っている理事長室だっていうことだ。
ここは全国的にも有名な男子高。つまり、告白している側も男でされている方も男。ま、それはどうでもいいとしよう。なんで、理事長である私がこうやって彼らを見守っているのかというと、自分の学生の頃を思い出してしまったからだ。
「...それって、どういう意味?友達?それとも、こ、恋人として?」
2人の話はまだ終わりそうになさそうだ。
そう、あの頃...。
私も勇気を振り絞って好きな人に想いを告げたことがある。結果はYESであり、NOだった。想いを受けとめてもらい、そして、彼も私の事を好いてくれていた。ただ、彼にはすでに婚約者がおり、その人の存在を知ったうえでの私の告白は、無意味なものと言える行為だった。
ただ、想い出が欲しかったのだ。彼を私だけでいっぱいにすることはできないけど、婚約者のいない学校生活の思い出の中に私という存在が彼の中に少しでも残るのならば...。
「...ふふ、若かったんですね...。」
呟きは、懐かしい思い出と共に消えていき、現実に引き戻される。
窓にうっすらと写る自分の姿は、あの頃のような若さはなくなっていた。
卒業間近の告白。卒業後別々の道へと歩んだ私たちは、あえて関わらないようにしてきた。知ることができるのは、友人からの話だけで連絡を取り合うことはしなかった。
それでよかった。
思い出は私の胸の中に大切に残り続けているのだ。
今までも、これからも。
ふと、彼らを見ると照れくさそうに手を繋ぎほほ笑んでいる。
上手くいったのだろう。
先を見つめることの迷いが彼らには立ちはだかることだろう。その時、相談できる存在がいる、それだけで、私のような想いを抱え続けなくてもいいだろう。いいや、抱え続けることを選ぶことも、また、悪くない人生なのかもしれない。
「...二人とも、良かったら私の昔話に付き合う気はないか?」
2人は、繋いだ手を自分たちの後ろに隠し、ぎこちなく頷いた。
それをみて、私は、優しく微笑んだ。
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