隕石はうけとるまでわからない

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 ミーティングが終わって、みんなが次々と画面から退出していく中、最後に残った私とヨシアキくんの目があった。 「いよいよだね。緊張してる?」 「そりゃするよ。システムトラブルとかあったら準備が水の泡だよ。実は私、実物見るのは初めてなんだよね。ヨシアキくんは?」 「俺は随分昔に家族と見たことある。でもあんま覚えてない」    なぜ彼がこの研究に参加したかは詳しく聞いていなかったけど、遠いところを見るように目を細めて見せたその顔は少しだけ私の頭の中をひっかいた。その瞬間、他の言葉が押し込まれ、今まで聞いたヨシアキくんの声だけが体の中に響いた。  なんだろう、この気持ち。  寂しさだろうか。  研究の集大成とも言える瞬間をもうすぐ迎える嬉しさはあるけれど、その時が来たら私たちのグループは解散することが決まっている。きっと、朝をむかえる頃には、みんな違う生活のことを考えている。  ヨシアキくんとも、どこかでずっと一緒に居られると思っていたけど、それももうすぐ終わりだ。  そう思うと、胸の奥がざわめいた。  星になれなかった石たちがゴロゴロと体の中に溜まっているような気分。 「がんばろうな」 「うん、がんばろうね……」  通信を切ったあと、寂しさがすごく大きくなった。作業を続けなくちゃいけないのに集中力が途切れてしまい、気分転換に外を見る。夜の向こうに星が見えた。あそこから、私のことは見えるのだろうか。星になって輝くというのはどんな気分なのだろう。満天に輝いて多くの物語を秘めた星座たちは、ほんの一瞬だけ細い糸を引いて流れ去っていく小さな光のことをどう思っているのだろうか。元いた場所から遠く離れ長い時を身に刻んでいく流星たち。ふっと消えてしまうほど儚い。  だめだ。  思考が一歩も前に進まない。なんでもいいから音が欲しかった。一人でこもっていると自分で作った思考の輪から抜け出せなくなってしまうことがあるけれど、今がまさにそうだった。こんな大事な時なのに。  聞きたいと思った音色は一つだけだった。
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