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守衛所の前を通り門を抜ける。 坂道を暫く下っていけば、小規模ながら寂れた商店街が見えてくる。 まだ開拓移民達が沢山いた頃は、ここも活気に溢れ、島中集まってはよくお祭り騒ぎをしていた。 閑散とした街並み。 古びた建物。 そこは、シャッター通りと化している。 その内の一軒………海沿いにある港通りに程近い小さな商店では、本土への注文品を取り纏めていた。 ここの店主、安田は元視察団。 年は五十を超えている。 埃っぽい店内。 商品棚には、殆ど何もない。 「……あの、すみません」 恐る恐る声を掛けると、奥から物音がした。 「……なんだ、βの小僧か」 店の奥から痩せ細った老人が現れ、僕を見るなり訝しげな表情へと変わる。 僕は、この安田が苦手だったりする。 軽蔑じゃない。何処か……僕の心を見透かす様な、この目が。 「……注文、お願いしたいのですが」 「………」 片足を引き摺りながら、安田がレジへと向かう。 この島に留まったのは、元視察団という肩書きだけじゃない。 ……きっと、この足のせいだ。 レジ下の引き出しから取り出された、キャンパスノートとボールペン。それらがレジカウンターに放り投げられる。 開いたノート。そこに数本の縦線が雑に引かれ、日付、名前、注文品、個数が枠内に書かれていた。 ………砂糖、米、醤油…… 生きていく為の必需品。 そこには、珈琲やパン等の贅沢品は書かれていない。 「………」 祐輔などのエリートがこの商店街にお金を落とさなければ、他に収入源はないのだろう。 胸の奥がグッと詰まって、痛い。 この島は、何の為に開拓されたんだ…… なんの目的で…… 色んな感情が胸中を渦巻く。 平凡なβ。 そう決定された時の島民の反応は今でも覚えている。 流刑島となってしまったこの島を、変えてくれるだろう救世主。 島民は『英雄が残した子』である僕を僅かな希望と捉えていた分、その絶望は大きかったに違いない。
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