それぞれのその後

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それぞれのその後

 その夜、中也の元にオスカーから電話がかかって来た。イギリスへ帰国した彼とは、定期的に連絡を取り合う仲なのだ。中也は、いつも通り近況を告げた。 「先週、士郎が遊びに来たよ。オスカーに会いたがっていた」  士郎とは今でも、友人関係が続いているのである。ちなみに彼は、あの後司法試験に無事合格し、現在は弁護士見習い中だ。 「それで、アメリカ移住の準備は進んでいる?」  中也はオスカーに尋ねた。何と彼は、ローラと結婚することになったのである。結婚後は、二人でアメリカに住むのだという。そんなわけで彼は今、結婚と渡米の準備の真っ最中なのだ。  四年前の国際フェスティバルで知り合って以来、彼女と遠距離恋愛を続けていると聞いた時、中也は耳を疑ったものだ。 『オスカーは、男性が好きなんじゃなかったの?』  自分を好きだったと言って、キスまでしたではないか。すると彼は、笑って答えた。 『男とか女とか関係なく、僕は純粋な人が好きなんだよ。それに彼女とは、同じ人を好きだったという共通点もあるしね……』  オスカーは、中也の問いに対して順調だと答えた。 「中也の方は? 仕事はどう?」  中也は少しためらったが、正直に告げることにした。 「実は今日、たい子さんがね……」  マネージャーの打診を受けたことを話すと、オスカーは一瞬沈黙した。 「――そう。気持ちが揺らいだ?」 「いや、悪いけど、たい子さんの話は辞退する」  中也はきっぱりと言った。 「オスカー、君との約束は守るから」
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