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人形
惹音きゅんが我が城に入ってくれた。
けれど私を嫉妬させるために別の職員を担当に登録したのだ。
なんと妬ましい。愛らしい。
きっといきなり二人きりじゃ恥ずかしいと思ったからだろうな。
うむ、きっとそうだ。
「ハァァァァ……惹音きゅん」
夜は大きなため息が出てしまう。
惹音きゅんに会いに行きたいが、書類を見て住所電話番号を覚えているとはいえそれは流石に犯罪だ。うむ。偉いぞ私。ちゃんと我慢できている。もし家に行くのならばジムから出た惹音きゅんの後ろについていき案内してもらおう。今日は全速力で逃げられてしまったがもっと足の筋肉を鍛えて今度こそ背中にピッタリ張り付いて離れないぞ。
……ああ、そうだ。
こんな寂しい日には、これが一番。
「さぁおいで……惹音きゅん」
枕の傍に置いてある惹音きゅん人形を手に取る。
この人形には惹音きゅんの本物の髪の毛を縫い付けてある。
え? なんで持ってるかって?
背後に立った時に一本取ったのさ。
私の筋肉を使えば相手に痛みを感じさせず髪の毛一本取るぐらいは余裕さ。
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