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眼鏡2
あかん。
めっちゃ怪しい人に捕まってしもた。
「私は君を愛してしまったようだ!!」
初対面で、しかも、同性の僕にゆーてる時点でアウトやろ。
見た目的に間違いなく5つか6つくらいちゃうやん。年。こっち未成年やぞ。
何ゆーてんねやろこの人。てか力めっちゃ強くて腕痛い。
「……通報します」
何の迷いもなくこの言葉が出た。
こういう人は警察にしょっぴかれるのが一番や。
「愛に障害など関係ない! 筋肉の前には無力!」
いや何言うてんねやろこの人。
あかん、危険人物やった。
なんで声かけたんや僕。
困ってそうやとは言え、声かけるべきやなかったわこれ。
「あ、もしもし警察ですか? 僕未成年なんですけど怪しい男に襲われてまして。〇〇眼鏡ショップです。助けてください。襲われていて怖いです」
迷いなく警察に電話した。
それでも「ハハハハ! 怖がらなくても大丈夫! 愛に溢れたお兄さんというだけだから!」となんかわっけわからんこと言うてるけど無視や。
近くに交番あるからお巡りさんが来るのは早かった。
ああ、これで地獄から抜け出せる
そう思ったのに、お巡りさんがありえないことを口にした。
「あ、肉盛さん! いつもお世話になっております」
「お、ブロッコリー君じゃないか! お勤めご苦労様!」
「武路湖李威です。……あれ、通報があったのって、もしかして肉盛さんのことですか!?」
「その通りだ!」
「やっだなぁ、何してるんですか。学生をいじめちゃいけませんよ?」
「大丈夫! 愛を叫んでいたら戸惑っているだけだ! 可愛いだろう!」
「なるほど、可愛いですね!」
あかん。
それはあかん。
頼りのお巡りさんが不審人物の味方っておかしすぎやろ。
「とりあえず痛いんで離してくれません? めっちゃ痛いんですわ」
「ああそれはすまなかった!」
案外素直に手を離してくれた。
――今や
「あ、足が滑った!」
ドスッ
「おぐっ」
「肉盛さーん!?」
蹴りが見事ヒットした。
嫌な感触したから効果抜群やろ。
お巡りさんが慌ててるけど、正当防衛やと許してもらお……ていうかそれどころやなさそうやし大丈夫そやな。
ダメージを受けた場所を抑え蹲る刈上げ頭のムキムキマンに一瞥を投げてから、素早く買い物をすました。
「予約していた博式惹音様ですね。お品ものの眼鏡はこちらでお間違いないですか?」
「はい」
うっわフルネーム言われてしもた。
聞こえてへんかったらいいけど。
僕の名前特徴ありすぎて覚えられやすいのがネックやねんなぁ……まぁええか
「ほな、さようなら」
もう会うこともないやろ。
そう思って背を向け店を出た瞬間。
「惹音きゅんだね! 覚えたぞ!!」
すんごい嫌な台詞が聞こえたけど、きっと二度と会うことないと信じることにした。
頼むぞ神様。やめてくれよ
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