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私の絶叫に周りの人が振り向いたがそんなの気にしてる場合じゃない。
私であれば一発で持ち上げて出口へとぶん投げるのになんと弱いアームなのだろうか。
もっと鍛えてくれたまえアーム君。
そして私に惹音きゅんを……!
「ちょっとそこの呼吸の荒いお兄さん」
「ハァ、ハァ、……ん? なんだい?」
おっと、興奮のあまり呼吸が乱れていたようだ。
私はすぐに呼吸を整えて声の方を見た。
黒髪マッシュヘアの、惹音きゅんに負けないぐらい秀才そうな学生がそこにいた。
「これ、ここ押したらいけるよ」
そう言って彼は横から手を伸ばして私のかわりに操作し――人形を手に入れてくれた。
「おおおおおおお! 君すごいじゃないか! 私の救世主だ……!」
早速私は惹音きゅん人形を抱きかかえた。
少したばこ臭かったが、可愛い可愛い惹音きゅんを抱きしめられるだけで幸せだ。
「なぁ傑、何してるん? 早く格ゲーやろーや」
ああ、神様
今のは幻聴なのでしょうか
先ほどまで人形があった機械からひょっこり顔を出した可愛らしい猫毛眼鏡君は幻覚ですか?
答えは、NO
「惹音きゅぅうううううん!」
私の黄色い声に、彼は「はぁ?」と眉を上げながら威嚇するような声を上げ私を見た。
目と目があった瞬間、私の心臓の炎は燃え上がり、驚きで大きく見開かれた彼の眼は私の心臓を視線だけで”ドシュッ”と射抜いてきた。
「……嘘やろ?」
ああ惹音きゅん
絶望の淵に立たされたような青ざめた顔も可愛いよ
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