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Episode2
燦々と照りつける太陽の元、私は最高に輝いている。とうとう、願い事が叶うの!
「うわぁ……大きい! しっかりと硬いし、それに、良い匂い……」
とろりとしたカラメル色の大きな双眸を輝かせて、うっとりと私を見上げるあなた。そうよ、そのまま思い切りもぎ取って。大切そうに私を両手で包み込み、そっと唇を寄せた。
この時この瞬間の為に、凍てつく冬の厳しさにも、容赦なく照りつける真夏の暑さにも激しい雨風にも耐え忍んで来たの。すべてはあなたに、最高に美味しく召し上がって頂く為に。
そうね、皮を剥いてメイプルシロップと煮詰めたり、美しく切られて、生クリームとデコレーションされるのも良いわ。豪華なパイ生地のソファに優雅に寝転ぶのも素敵ね。柔らかいスポンジのベッドに女王様みたいに腰をおろすのも悪くないわね。
でも一番のお勧めは……冷たい氷水でよく洗って、皮ごと丸ごとかぶりついて貰う事よ! それが一番活きが良くて、最高に美味しい食べ方だから。
あぁ、氷水がとても気もち良いわ。優しく撫でるように洗うあなたの手つきが、体中のツボにあたってより甘く瑞々しくなれそう……。
あぁ、あなたの愛らしい珊瑚色の唇が、私を食そうと……。
そう、私の願い事は、大好きな桃花ちゃんに丸ごと美味しく召し上がって頂く事なの! そして大切な彼女の心を潤し、血となり肉となり、細胞の一つに溶け込み、傍にいて幾久しくあなたを守る事なの。
……あぁ、今、夢にまで見た一口、カリッとあなたに齧られ瞬間が。そして咀嚼され……
香りと食感も楽しんでね!
もう、最高に快感!!! ほとばしる私の果実、あなたの口回りと頬を濡らす。お口いっぱいに広がった果肉が、至福の瞬間を与える筈。それからあなたの喉を通り、食道を通過し、胃の中へと……
流れ星にお願い! そしてお願い事は宣言か過去形言い切りが効果あり! 本当だったのね!!
そう! 私は、桃花ちゃんが十五歳の誕生日を迎える時に植えられた桃の木なの。私の分身の一つ……それもとびきり上等な私が選ばれて、丸ごと彼女の栄養になったわ。
これからもずっと、この庭の片隅で桃花ちゃんを見守って行くし。もし離れる事があっても、私の分身が彼女の細胞の一部に溶け込んでいるから大丈夫なのよ!
いつもあなたと。大好きなあなたの力になりたいの。今宵も、一晩中夜空を見上げて流れ星を見つけるわ。そして星降る夜に、お願いするの。
……大切な桃花ちゃんの傍に永遠にいます! そして彼女を見守り続けます!!……
あっ! ほら、流れ星が一つ、二つ……
【完】
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