29人が本棚に入れています
本棚に追加
情報体
「出逢蒔奈さん……」
紫色のしなやかな髪、濃い瑠璃色の瞳、白い肌……美少女の形容詞を絵で描いたような女の子だった。
でも何かが違う、気配を感じない。
「あ、はじめまして、巧です。17才ですか、俺よりも先輩ですね、よろしく」
手を差し出すと、彼女は嬉しそうに両手で俺の手を握りながら、語った。
「わからないことがあれば、なんでも聞いてね。知っていることはなんでも教えちゃうよ」
上目使いでウインクをしながら、会釈してくれた。
なんだんだ、この人……このサービス精神? 変わった女の子だ。
俺の動揺を横目に、モナ所長はクスクスと笑っていた。
「彼女は宇宙ビジネス国際機構から派遣された情報体よ」
「情報体?」
「そう彼女は人間じゃないのよ、ヒューマイドみたいなもの」
「ヒューマイド???! 人間じゃないって?」
普段あまり動揺しない俺だったが、まさかどう見ても人間だ。でも、しかし、確かに呼吸をしていない。だから気配を感じなかったのか……
「機械体の開発に合わせて、情報体の開発も進めていたわ。来年の宇宙エレベーターの稼働に合わせて、ヒューマンアシスタントとして働く予定なの。彼女はそのプロトタイプで、今はここで実証検証中。宇宙ビジネス国際機構の支援金でここは運営しているからね。名前はdea ex machina、機械仕掛けの女神から取ったものよ」
「まさか、もうそんな時代になっているなんて、知らなかった。彼女とは……なんでも話せるの?」
「そうよ、彼女は情報提供とケアサポートをすることがお仕事の情報体。あなたの教育係には最適でしょ? 彼女の存在もここだけの秘密だから、口外しないようにしてちょうだい。後は……マキナちゃんにおまかせするわ。マキナちゃん、よろしくね」
最初のコメントを投稿しよう!