情報体

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情報体

出逢(であい)蒔奈(まきな)さん……」  紫色のしなやかな髪、濃い瑠璃色の瞳、白い肌……美少女の形容詞を絵で描いたような女の子だった。  でも何かが違う、気配を感じない。 「あ、はじめまして、巧です。17才ですか、俺よりも先輩ですね、よろしく」  手を差し出すと、彼女は嬉しそうに両手で俺の手を握りながら、語った。 「わからないことがあれば、なんでも聞いてね。知っていることはなんでも教えちゃうよ」  上目使いでウインクをしながら、会釈してくれた。  なんだんだ、この人……このサービス精神? 変わった女の子だ。  俺の動揺を横目に、モナ所長はクスクスと笑っていた。 「彼女は宇宙ビジネス国際機構から派遣された情報体(インフォロイド)よ」 「情報体(インフォロイド)?」 「そう彼女は人間じゃないのよ、ヒューマイドみたいなもの」 「ヒューマイド???! 人間じゃないって?」  普段あまり動揺しない俺だったが、まさかどう見ても人間だ。でも、しかし、確かに呼吸をしていない。だから気配を感じなかったのか…… 「機械体(ロボティカ)の開発に合わせて、情報体(インフォロイド)の開発も進めていたわ。来年の宇宙エレベーターの稼働に合わせて、ヒューマンアシスタントとして働く予定なの。彼女はそのプロトタイプで、今はここで実証検証中。宇宙ビジネス国際機構の支援金でここは運営しているからね。名前はdea ex machina(デア エクス マキナ)機械仕掛(きかいじか)けの女神から取ったものよ」 「まさか、もうそんな時代になっているなんて、知らなかった。彼女とは……なんでも話せるの?」 「そうよ、彼女は情報提供とケアサポートをすることがお仕事の情報体。あなたの教育係には最適でしょ? 彼女の存在もここだけの秘密だから、口外しないようにしてちょうだい。後は……マキナちゃんにおまかせするわ。マキナちゃん、よろしくね」
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