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山成毬音、レスキューナンバーの運用状況を監査する主査を担当している。レスキューナンバーは国連災害基金と、宇宙ビジネス国際機構という財団からの支援金で運用している。毬音はその財団から派遣されている。
「この実働検証が完了すれば、いよいよレスキューナンバーの本番稼働ね」
「ええ、でも機械体との同調率ではまだ課題が残っている……優秀なシンクロナイザーが必要だわ。ドル、そのまま消火活動を進めて」
シンクロナイザー……機械体と意識の同調を行い、敏速な判断、対処を行っていく機鋼操縦隊員。技術的なハードウェアは完成したけど、優秀な人材を集めるのはこれから。同調率が最低でも50%は必要になってくる。
「Roger That、待ってください、観測ドローンが移動体を発見しました」
「え? これは演習試験だから、移動体はないはずよ? 確認して」
「移動体にカメラズームフォーカスします。これは……推定年齢16歳の男子が4名」
オペレーションルームのディスプレイに表示されたカメラ映像に赤色のグリッドラインでフォーカスが当たった。右往左往する4人の若者の姿が映った。
「大変だわ! 誰かこの試験場に入り込んでいる! ドル、緊急救助活動準備!」
「あ、あれは! 巧?!」
ガタッと椅子を立ったかと思うと、辰上真チーフエンジニアが叫んだ。
「あれは……うちの息子だ!何やっているんだ、あいつ」
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