RESCUE NUMBER 02

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 水面をよく見ると、一人の女性が泳いでいた。クロールでも、平泳ぎでもない、海蛇(うみへび)がうねるような不思議な泳ぎ方だ。  ――ヴー、ヴー、ヴー――  その瞬間、警報音が鳴り響いた。プールの水流がいきなり勢いを増し、水しぶきを上げながら、大きな渦を巻き始めた。 「あ、あぶない!」  渦はさらに勢いを増し、プール全体がすべてを飲み込むような渦潮(うずしお)に変化していった。  このままでは女性が溺れてしまう! 「大丈夫ですよ、見ていて」  マキナは動揺する様子もなく、観察していた。  その女性は波に逆らうことなく、波に合わせて、体をくねらせながら、難なくプールを横切っていった。 「すごい……」  思わず声が漏れた。あの勢いのある波の中を泳ぐなんて、どんな身体能力なんだ? 「彼女はあなたと同じシンクロナイザー、RESCUE No.02の機鋼操縦隊員よ」 「なんでこんな演習をこなさないといけないんだ? 機械体がやってくれるんじゃないの?」 「機械体は過去データに基づく予測を用いて、行動パターンを決定するんだけど、想定外のことが起きた時に瞬時の判断を下すのは難しいから、人の直感力に頼ることになるの。だから機鋼操縦隊員(シンクロナイザー)の身体能力がとても重要なんです」
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