[ALERT PHASE 01]  RESCUE NUMBER始動

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[ALERT PHASE 01]  RESCUE NUMBER始動

 西暦2040年、世界的な自然環境の激変により、「アース・パンデミック」と呼ばれる異常気象、自然現象を起因とした災害が多発する事態となっていた。  その大規模災害に対応するため、日本では「特殊災害対策法」が設立される。未曾有の危機に迅速に対応するため、総務省消防庁管轄の特殊災害室とは別に、AI、ロボット、ドローンを活用した特殊災害対策専門組織が設立された。その名は……  特殊災害(とくしゅさいがい)種別対策(しゅべつたいさく)機鋼隊(きこうたい)  通称 ――RESCUE《レスキュー》 NUMBER《ナンバー》――  そして、西暦2052年現在―― 「レスキューナンバー01(ゼロワン)、起動試験入ります」 コミュニケーターの柚子奈(ゆずな)から、アナウンスが入った。 「OK、テストシナリオパターンA-03からA-24までを実行してみてちょうだい」  ここは屋外機動試験場 ――E FIELD[エマージェンシーフィールド]――  これからレスキューナンバー第一号機「ドルフィンノーズ」の実証試験に入る。ドルフィンノーズの命名は、機体の頭部がイルカのような形状をしているためだ。  この機体はニューラルネットワークを基盤とした人口知能を搭載した半自動制御機械体(ハーフセンスロボティカ)。主に大規模火災対応に最適化したロボットのようなもの。ニューラルネットワークは脳内の神経回路の動きを模倣することで、人間と似たような思考や行動を行うことができる。  「ロボットのようなもの」という表現になるのは、このロボットがただ命令に従うのではなく、自分の意志を持って、自動的に機動するから。もちろんすべてを機械にまかせるわけではない、機械と人間が相談しながら、緊急事態の収拾に対処を進めていく。  私達は彼らのことをロボットとは呼ばず、「機械体――ロボティカ」と総称している。  私はモナ・リサ、レスキューナンバーの所長をしている。元々はただの機械オタク。イタリア系のハーフ、年齢は……内緒よ。亡くなった母親の遺志を継いで、世界に貢献できる機械を開発していくのが、私の夢……いえ、今は夢なんて言ってられない、現実に直面している危機に立ち向かわなければならない。 「モナさん、ニューラルネットワーク接続、音声接続します。ニューラルシンクロナイズ」 「了解、繋いでちょうだい」  私とドルフィンノーズとのニューラルネットワーク同調が開始された。機械との意識共有によって制御を行う。ただし、私との同調率が25%と低いので、直接対話によってコミュニケーションの不足を補う。  試験場に設置された移動型サイバネティクスオペレーションルーム「グリーン・キャタピラ(芋虫)」から遠隔で指示を出す。  オペレーションルーム内の立体ディスプレイに、同調率を示す波形が表示されていた。 「ドル、おはよう、これからテストを始めるわ、覚悟はいい?」  ピアスフォンから語りかける。  “ドル”、フルネームは長くなるので、あだ名で呼ぶようにしている。 「所長、おはようございます。準備はできています。覚悟とは、どのくらいの確率論のお話でしょうか?」  人工声帯音声の返事が返ってくる。年代設定は20代後半の男性といったところ。 「んーまあ、フィフティ・フィフィティといったところね」 「50%ですか。その程度の確率論でしたら、問題ありません。現在成功理論値7:3の割合と分析しております」  ドルはこの辺の会話がまだロジカルすぎるところが難点。そういう時は「大丈夫です! 覚悟はできてます」って返してくれるといいんだけど。 これはAI開発者の(まこと)さんのくせね……普段会話しているパートナーの癖がそのまま人格反映されてしまうから。 「これからA-03の災害対応試験を行うからね、シナリオは理解している?」 「はい、山林での空気の異常乾燥による自然発火、その消防活動です」 「一番重要なことを忘れていない?」 「要救助者を発見した場合、対象者の救助、避難支援を最優先で実行します」 「OK、では開始するわ」
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