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今日は星が降るそうだ。
籠に夜食と飲み物を詰め込んで、あの場所をめざそう。
今日は星が降る流転の日。
時間をかけて開いた星たちは、どんな色を咲かせているのだろうか。
それは木の茂る森の中。それは水を湛える海の上。それは霧が漂う湖の裏。それは焼きたてのパンの香りが香ばしい店の横の畑の一画。それは人が眠るあたたかい家の屋根。
それは真実が未だ眠る追憶の研究所跡地。
それは目覚めを待つ黄金の卵を包む金鉱山。
それは水を欲しがる塩の平原。
つまるところ、それがどこにあるのか誰も知らないのである。
今夜は星が降る夜。
その言葉の通り、頭上に輝く星たちが大地へと降り注ぐ貴重な夜なのである。と言っても、一つ一つの星がまるごと落ちてくるというわけではない。空に浮かぶ星たちは一条の涙を地上へ向けて落とすのである。
そして、それは不思議と地上のただ一ヶ所を目指して降り注ぐのだ。まるでそこには流した涙を受け止める桶が用意されているかのように。
空を仰ぎ、命の灯火を揺らしながら目にする情景を、生きている間は忘れることがないだろう。胸に焼き付くその光は、生きるものたちへの励ましのメッセージなのだから。
今夜は星が降る。
誰とも知らずにその言葉が聞こえた日には、きっと空が晴れるだろう。星が届けるその光が、雲を切り裂き地上へまで落ちてくるのだから。光が、空を晴らすのだ。
今夜は星が降るそうだ。
晴れた夜空を見上げながら、みんなであの場所をめざそうではないか。
星が降る夜に夜空を見上げて、
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