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「陰世が光を奪ったとしたら、これは大変なことですぞ。これまで我らは、互いに一切関与しないことで、均衡を保って来たのですからな」
「まだ陰世と決まったわけではない。それよりも、光が無くなったのなら、新しい光を探して来ることを考えてはどうか。陰世と争うよりも、平穏に解決するであろう」
「だが、これが陰世の仕業であるならば、新しく光を手に入れても、また吸い込まれてしまうのではないか」
「ええ、それに、別の光を手に入れたとて、太陽神様に馴染むとは限りませぬ」
「しかし、太陽神様が目覚めぬのは、単に光が無きがゆえという可能性も、なきにしもあらず」
「たしかに。太陽神様のことだ、明るくなりさえすれば、案外けろっとお目覚めになるやもしれぬ……」
「むしろ、いつもの夜明け時になれば、光あらずともしれっと目覚めたりして……」
「太陽神様、そういうとこあるな」
「ふむ」
ひとまず、日奈神子と側近達は、一晩様子を見ることにした。
民達には、太陽神様のご体調が優れず、光に影響が出ているが、一時的なものゆえ騒ぐに及ばず、とお触れを出した。
民達は先般の太陽神様の「よく眠れているかい」事件を取りざたし、不吉である不吉であると口々に憂えたが、この非常な出来事に、どこか心を躍らせているようでもあった。
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