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「太陽神様!」
日奈神子はとっさに叫んだ。視界が一瞬にして真っ暗闇に包まれたのだ。
辺りが見えずに何度もまばたきを繰り返す日奈神子の耳に、ざわざわと他の者達の戸惑う声が入ってくる。
「近くに誰かいますか! 太陽神様! 正波仁! 私の声が聞こえますか!?」
日奈神子は手探りで調度品を伝いながら、太陽神様の寝床の方へと歩を進めた。
「ひ、日奈神子様……」
それは正波仁の声だった。
「正波仁ですか? 太陽神様はご無事ですか!?」
「はぁ……たった今寝床でお眠りになったので、ご無事です。ちゃんと、これここに、いらっしゃって、寝息を立てておいでです。しかし、この暗闇はいったい……?」
「なん……ですと……?」
日奈神子は愕然とした。こんな真っ昼間から太陽神様が眠ってしまわれたなどと、そのようなことはこの一億年、一度たりともなかったことだ。
「もしや、正波仁、そなたが……!」
「私めは、太陽神様のご指示に従って、こころゆくまで眠れるようにと術をかけたまででございます。この暗闇には……」
「愚か者めが!」
日奈神子は激怒した。太陽神様の変則的な眠り、そして突然闇に包まれた世界。一億年で初めてのことが二つも同時に起これば、無関係なはずがないではないか。
しかし今はそれをとやかく言っている暇はない。日が消えたとなれば、民達の間でも騒ぎになっているに違いないのだから。
「急ぎ、術を解くのだ、正波仁!」
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