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 しだいに目が慣れてきて、(つね)の日没後どおり、星明かりで辺りが見えるようになってきた。  日奈神子は太陽神様の側近達を集め、対策を練ることにした。  正波仁は、太陽神様を眠らせた張本人として、また当人の証言のみでは信ずるに足りぬとの判断から、ひとまずは逃がさないよう、神殿の柱に括りつけられることとなった。 「日奈神子様、私めは光が消えたことには無関係でございます」 「それも太陽神様がお目覚めになればわかること。それまではそこで辛抱してもらおう」  日奈神子は厳しい目に少しの憐れみを滲ませて正波仁を見上げ、長い黒髪と真っ赤なローブをふわりと翻して足早に歩み去った。  さて、側近達八名が神殿の大広間に集まり、議論が開始された。 「まず、民達より、かような目撃証言が届いております」  側近の一人が、陽世民(ひのよのたみ)達から受念した言葉を読み上げた。 「“暗くなる寸前に、頭の上にあった日が流れ星のごとき速さで、スウッと日暮れの方角に落ちてゆくのを見た”。異口同音に同じ証言が多数届いており、これは事実と言えましょう」  日奈神子はもどかしそうに答える。 「それだけでは、太陽神様の眠りに合わせて日が沈んだのか、陰世(かげよ)が日を吸い込んだのか、判別がつきませぬ。他に証言はないのですか」 「“光が消えるしばらく前に、太陽モニュメントの前で太陽神様にお声掛けする怪しい男がいた”との証言も複数あります」 「それも知っています。あちらに括り付けておる正波仁のこと。あやつは陽術師ですよ」 「本当に陽術師ですか……?」  別の一人が疑問を投げかける。 「少なくとも陽世民(ひのよのたみ)であることは間違いない。私が(じか)に念色を確かめましたから」 「陰世のスパイかもしれませぬぞ。念色をごまかすくらい、陰世民(かげよのたみ)ならばやりかねません」  そう言われて、日奈神子は少し自信がなさそうに黙り込んだ。
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