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「あの大きな箱は何なのです?」 私は上空に浮かび静止している物体を見上げながら誰に向けるでもない問いを口にした。 「傍観者ですよ」隣に立つ少年がやはり私同様その物体を見上げながら答える。 「ああして上空から世界を見渡し悟った風でいるのです。いい気なものですね」 そんなどこか冷めた声を聞きながら私はその物体を見上げ続ける。 日の光を遮るように浮かぶ物体は真っ黒で、影の落ちた地上は闇の色を濃くする。 そこにたたずむ私たち諸共。 まるで私たちの存在を否定されているかのように感じ、ひどく気分が悪い。 「撃ち墜とせないのですか?アレ」 ささくれ立った感情のままにそう問いかけた私に、少年は目を見開き大きな口で乾いた笑い声をあげた。 「アレを?ハハッ!そりゃあ面白い。やれるものならやってみるといい」 顔を歪め、嘲笑うかのような少年にムッとし睨みつけると、彼も笑いを引っ込めてこちらを見つめてきた。 何の感情も伺えない空ろな瞳。 ゾクリした。 「そんなこと……できるものならとっくにやっている」 少年はそう冷たく吐き捨てるとその空ろな瞳で上空の物体を見上げた。 黒い物体は何も語らない。 『箱』
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