クリームソーダ

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クリームソーダ

子供の頃、家族でレストランに行くと決まって注文するものがあった。 メロンソーダにバニラアイスをおとしたアレ。 緑色、決してメロンではないメロン味、程よい炭酸、冷たいアイスクリーム。時間と共に溶けて混ざり合っていくのもまた醍醐味。 食べるのなんてそっちのけで、アレこそが目的だった。 年月は流れ、大人になり、味覚もだいぶ変わってしまった。 今の私はアレを受け入れることができるだろうか? 無理かもしれない。今の私はアルコールや無糖のコーヒーの方がしっくりくる。 あの頃のようなトキメキはもはや感じることはできないのではないか……。 けれど、それでいいのかもしれない。 アルコールに酔うのが大人にしか許されない特権なら、アレを味わう至福、その特権はあの頃の私に譲ってやろう。 そして後に彼も過去を思い返し懐かしむのだろう。 グラスではじける炭酸の音を聞きながら、遠い記憶の中の私に想いをはせた。 『クリームソーダ』
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