夏の記憶

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流星群の話を聞いた当時の俺は家の裏にある丘に向かった。 その丘にある一本の大きな木の下でその子と出会った。 歳は俺より上で今思えば小学6年生くらいだと思う。可愛らしい白の花柄ワンピースを着こなす彼女はとても可愛らしかった。 木の下で流星群を見ている俺の隣にそっと腰掛け一緒に眺めていた。 俺が話しかけても話してくれることはなくただこちらを見つめるだけ。 その瞳は優しげながらどこか悲しそうだったのを思い出す。 場面は変わり夜。 丘の上にある木の下だ。上を見ると綺麗な流星群が次々に現れては消える。 隣を見ると楽しそうに見る俺とその姿を見る少女の姿が。 俺の姿は少し大きくなっていた。おそらく6年生くらいか?最初は少女の方が大きかった背丈もこの頃には俺の方が大きくなっていた。 隣の少女は初めてあった頃と姿も服も変わっていない。 今思えば不思議だな・・・あの頃もどうして?と思っていたが特に聞くことは無かった 「また来年も来るね!」 どうやら流星群も終わったようでお別れの挨拶をしているようだった。 (たしか・・・これが最後だったな。) この次の年から俺はここに来ていない。それは社会人になった今もだ。 だからこの少女と会うのはこれが最後だった。 「・・・」 少女はやはり話さない。しかしその目は今まで以上に寂しそうだった。これが最後になると知っているかのようなそんな目だった。 「まってるね?」 (え??) 確かに聞こえた。俺の声ではないとても綺麗な声だ。 そして驚くことに少女はこちらを見ていた。 にっこり笑った彼女はもう一度 「まってるね?」 そう言った。 (これは俺に言ってるのか?) 「待ってくれ・・・」 言葉を出した時には既に少女の姿はなく見慣れたオフィスが目の前に広がっていた。
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