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この日、信治はミュージシャンの一之瀬左京(いちのせさきょう)のライブに同行していた。 左京との出会いは、動画サイトでアップされていた曲・japを左京が気に入り、ダイレクトメールでカバーをしたいと言われたのがキッカケで仲良くなった。 このjapは、とある異国と日本の関係を痛烈に批判していて、ラップではなくてほぼ朗読に近くてサビの部分でようやく支離滅裂なラップが流れるといった曲で、左京が「中々面白いな」と言い、ラジオやテレビでズームイン!の動画をテレビで紹介をすると一気にファンが増えた。 さすがにラップ部分は歌えないため、左京はアレンジをしてライブで度々披露していた。 左京も信治のことを信頼し、よくライブツアーやテレビの収録で演奏をする際には欠かせない存在となっていて、たまに左京の曲も手掛けたりしていた。 お互いに、信治は左京のことをイッちゃん・左京は信治のことを呼び捨てで呼び合い、お互いにタメ口だった。 「信治、お前最近顔が丸くなってきたな?」と言い、左京が優しく微笑むと「えー?そうかなぁ??」と言いながら、信治は鏡で自分の顔をまじまじと見ていると「見りゃわかるさ。恋してンだろ?」と言い、左京はタバコを咥えると火を着けた。 信治が「アハハッ♪んーまぁ…恋っちゃ恋だけれど、俺でいいのかな?なんて思ってるンだわ」と言い、力無く笑うと「そうなんだ?恋はいいよな。お前はな自分が思っているほど器がデカイしイイ男だから、俺は好きだよ」と言いながら、左京はニンマリ笑った。 信治は苦笑しながら「野郎に褒められても、嬉しくないよ〜」と言うと「コンニャロメ!人が褒めてやってンのに、何だその態度は??」と言い、左京は笑いながらコブラツイストをした。 「一之瀬さん。妹尾さん、ライブ入りお願いしまーすって何やってンすか?!」と二人を呼びに来たライブスタッフが驚いた顔をした。 信治は左京のサポートミュージシャンとして活動をしているときは、素っぴんでサングラスとニット帽を目深に被っていて、Butterfly≠KnifeのツアーTシャツかパロディTシャツにスキニーズボンで、ラバーソールかエンジニアブーツを穿いたりしていたため、わかる人にはわかる服装だった。 ライブの前に円陣を組んで「今日はライブ初日だ!気合い入れてくぞっ!!」と左京が言うと全員で「オー!!」と言い、ライブ会場へと向かった。 もちろんこのライブにも関谷と結羽菜と京一と法子も来ていて、盛り上がっていた。 信治がギターで、japのイントロを弾くと左京が歌い始めた。 「あんなに下手(したて)に出てやったのに、調子乗ってんな。 お前らなんか消すことぐらい簡単だよ。 政治国家なんかクソ喰らえ。 サハラ砂漠で 総理同士でジャンケンさせましょうか? 死ぬこと以外は何も怖くはないさ。 日本人を舐めんなよ? そっちが祝砲ロケットなら こっちは特攻隊でケツの穴にブチ込むぞ。 あんなに笑顔で接してやったのに、 本当は臭えニオイに耐えらんねぇ。 畜生!ニオイが染み付いて取れねぇ! 畜生!クサくてたまらねぇ! 畜生!パクってばっかいるンじゃねぇ! お前ら全員土下座しな。 国民全員消え失せろ」 と歌うと、さらに盛り上がった。 法子はニコニコ笑いながら、ノリノリだった。 ちなみに法子は、ズームイン!のファンだったが関谷と信治の覆面バンドだということは、全く気付いていなかった。 関谷は苦笑しながら「冷静に聴くと、凄え歌詞だなぁ…」と言うと「今更?ウフフ♡それを歌ってるパパ、素敵だよ?」と言い、結羽菜はニッコリ微笑んだ。 京一が「はいはい。ノロケなら、俺とのんこがいないトコでやってや?」と言い、苦笑をした。 この日のライブは、大盛り上がりだった。
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