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実家に嫌気がさしていた。
親父とお袋と暮らしているが、2人とも家のことを全くと言っていいほどやらないどころか、働きもせず俺の金を当てにしている。
中学を出てからずっと働きっぱなしで食い扶持を稼いできた。娯楽もなく、ただ蟻のようにひたすら働いた。
結果、得たものは何も無い。
一生こうして生きていくのはごめんだ。
せめてこの家から出ていきたい。
親に内緒でそんな願望を抱えながら、インターネットで賃貸物件を探していた。
本当なら春頃に多く賃貸物件が掲載されるだろうが、今は夏真っ盛り。空き部屋情報は少ないだろう。
もちろん限界だから来年まで待てるはずがない。こんなことならもっと早く決断すればよかったな。
賃貸情報サイトを何時間もかけて血眼で眺めた。なるべく安い家賃で、敷金や礼金がないアパート。なおかつ家具がついていれば最高。
風呂とトイレと寝る場所さえあれば多少古くて汚れていてもいい。
ちょっと時間ができた時はアパート探しに夢中だった。時々は高級マンションを検索して、自分が住んでいる姿を想像した。想像ならただだからな。
今は情報と写真だけじゃなくて360度パノラマビューなんていうのも載せている。立体的で室内をぐるりと見渡せるんだ。まるでその場にいるような気分になる。
そんなことを毎日のように繰り返していた。あらゆる物件を横になったまま堪能出来る楽しみを知った。
あれを、見つけるまでは。
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