2人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
築45年の木造建築でそれなりに古いが、部屋だけはやたらと綺麗なアパートを見つけた。
家賃も安い、敷金礼金なし。ささやかだが家具もついている。
喜びながら人差し指で端末画面を滑らせる。1人で住むには勿体ない広さだ。外見はともかく中身が良いなら文句はない。
もう住まない理由がない。早いうちに不動産屋へ連絡して契約を結ぼう、そう思った時だった。
和室の画像で指先を滑らせたら、ふいに押し入れが映った。押し入れは隙間が開いていて、その隙間から一瞬、人影のようなものが見えた。
人影、というより、こちらを覗いている人の目があった気がした。
頭のてっぺんから足の裏まで氷の槍が貫いたような感覚に襲われる。
きっと、見間違いだろう。そうに違いない。
心臓が激しく脈打った。
恐る恐るもう一度押し入れの画像に戻した。
最初のコメントを投稿しよう!