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桜が今年も咲いた。
綺麗なピンク色に・・・・・
満開に咲くその花を見て、本当に毎年毎年桜は頑張ってるんだなと僕はいつも思うんだ。
この桜のように、毎年花を咲かせ、葉になり・・・・
そして、次の年も生きていく・・・・・。
そんな毎日が、僕にも来ると思ってた。
「宏人?どうしたの?」
「ねぇ、なっちゃん。」
「ん?」
「・・・桜って不思議だよね」
「どうしたの?急に」
「・・・・なんでもない。行こうか?」
僕は、なっちゃんの手を握ると、歩き出した。
そう、遡ること3ヶ月前・・・・
大学入試の朝だった。
僕と、なっちゃんはこれからセンター試験を受けるのだ。
数時間・・・・
なっちゃんと待ち合わせていた。
学科が違うためだ。
そんなとき、寂しそうな顔をした彼をみた。
「宏人、お待たせ。どうしたの?誰か知ってる人?」
「ううん。でも・・・・あの彼、なんだか寂しそう・・・なんかあったのかな・・・・」
「・・・そうね。そうかもしれないわね。」
その彼が、西田君と気づいたのは、僕たちが、入学してからだ。
「気の毒だよな、西田のやつ」
「彼女が、自殺したらしいよ」
「でも、試験直前だったみたいだし・・・・・」
「親友と思ってたやつに、彼女奪われたらしくて・・・・・」
そんな会話をしていた同級生たちがとおりすぎていった。
「えっ?自殺?」
僕の脳裏にも、同じような出来事が浮かんでいた・・・・。
いや、思い出した。
「でも、彼は違う・・・。彼は、最愛の人を失ったんだ・・・・」
辛いよね。
悲しいよね・・・・。
試験・・・受かってるといいけど・・・・・。
「宏人?」
「えっ?」
「今日は、病院で検査の結果を聞きに行く日でしょ?」
「あーあ。せっかく、受験も終わって解放されたのに、今度は病院?」
「いいから、いくわよ?」
「はぁ~い。」
そしてこのあと僕は、、医者からとんでもないことを聞くことになる。
「先生?今、なんて・・・・」
「君の命は、あと半年・・・・もつかもたないか・・・・
といいました。」
「・・・・あと、半年?」
ということは、大学入ってなにも楽しいことをしないまま?
想像もつかなかった。
まさか、こんな形で余命を、宣告されるなんて。
「あの!どうしても入学したい大学あるんです!
今日は、その大学入試が終わったばかりで・・・・なのに、僕は、その大学生活を楽しめないまま死ぬと言うんですか?
やっとつかんだ夢・・・・
やっと、叶いそうなんです!
なんとかなりませんか?半年なんて短すぎます?」
短すぎるよ!
せめて1年・・・
いや、2年でもいい!
「君の体は・・・・・」
先生の言葉を遮るかのように、僕は続けた。
「ちゃんと、病院通います。
薬も続けます。治療もちゃんとしますから!」
「目標があるんだね?その大学で。」
「はい!
目標というか、夢と言うか・・・・。ただ、ある人に会いたいんです・・・・。」
「・・・・そうですか」
そのあとしばらく僕は、先生と話をした。
先生は、僕の話を嫌な顔せず聞いてくれた。
病室を出ると、心配そうな顔のなっちゃんがいた。
「宏人!どうだった?」
「なっちゃん・・・・いてくれたんだ」
「当たり前じゃない。」
なっちゃんにはまだ、話せないや。
しばらく黙っておこう。
「・・・とりあえず、入院とかは、しなくてもいいみたい。体力つけてって言われたけどね・・・
無理はするなって。疲れやすいから気を付けろってことかな・・・・・」
「本当に大丈夫なの?」
「・・・うん、大丈夫」
「・・・なんか、心配」
「大丈夫だから、心配しないで?」
「宏人、昔から嘘つくのうまいから。だから、心配。出会ったときからだよ?自分のことより、他人の心配ばっかり・・・・
こないだも、みんなを心配しすぎて・・・・」
「小さい子供じゃないんだ。自分の体のことは、自分がよく知ってる。あのときは、ちょっと油断してたんだ。」
「じゃあ、約束して。」
「えっ?」
「無理はしないって、約束して」
「・・・わかった。」
指切りをした。
「よかった。なんともなくて」
なっちゃんは、僕に抱きついてきた。
僕は、なっちゃんを抱きしめながら、
心の中で
《ごめん》
と、謝った。
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