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「もしもし母さん? うん、俺の会社もさすがに休み。そっちに帰る」
守親子の会話は至って端的だった。
それは、突然の隕石落下への恐怖や混乱というよりもただ単に守の身体が疲弊していたからだ。
『将来は、宇宙飛行士になって大工さんになる!』
『どうしてそのふたつなの? 』
『天の川に丈夫な橋をかけて、彦星さんと、織姫さんがいつでも会えるようにするんだ!』
深夜二時。
守は、目覚めた。隕石云々も夢なら良かったのにと願う守だったが、小さな頃の母との会話以外は全て現実だ。
「あの頃が懐かしいな」
守は氷の入ったグラスで喉を鳴らしながらゆっくりと水を飲んだ。もし、本当に自分が宇宙飛行士になることが出来ていたのなら、もっと違う未来があったのかと守は思いに耽っていた。
それと、同時に藁にもすがるような思いで今年も神社に短冊をかけようと決心するのだった。
彦星と織姫は今頃、何をしているのだろう。せめて、この星にいない彼らだけは会う時の服を選んだりなんかして楽しく過ごして欲しいと守は願っていた。
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