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1時間以上にも渡る晩御飯を終え、5人は大浴場に向かった。タイル張りの浴場で汗を流して浴衣に着替える。再び合流してからは地下1階に向かった。女将の梵が言うにはゲームセンターがあるらしく、都内で見掛けるような筐体が並んでいる。クレーンやシューティング、様々なゲームを行う。気付けば20分近くが経過していた。黒い革の筒のような椅子に腰掛けてタバコを燻らせる。薄暗い地下を彩るネオンの隙間を縫うように岸がやってきた。何故かこちらを見て表情を明るくする。 「ねぇ、皆で写真撮ろ。」 ピンクゴールドのケースに収まった携帯を掲げて言う。妙に可愛らしく見えたのは気のせいかもしれない。化粧をしていない素肌を晒した岸の目は少しだけ細くなっている。口端から煙を押し出して煙突のような灰皿に放り投げた。いいよ、と一言だけ言って立ち上がる。彼女が周りに目を配ってから少しして全員が集まった。 角度を調整して、ゲームセンターの隅に集合した5人は眩いネオンを体中に浴びながら撮影した。薄暗い背景のせいか岸と松田は写真を見てはしゃいでいる。まるで夜を限界まで掘り下げていくかのように5人は4泊5日の初日を堪能していった。 もうあの人形だらけの村のことなどすっかり忘れていた。
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