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気が付けば時刻は夕方だった。 全員が部屋から出ることなく、特に会話が続くことも無い。岸と松田は部屋の隅で固まったように俯き、久保田と斎藤は燻らせるタバコの本数が自然と多くなっていた。唯一行動を起こしていたのは堀内だった。 端に置かれたテーブルの上にノートパソコンを立ち上げ、キーボードに指先を打ち付けている。特に気にする様子もなかったが、久保田は広縁の椅子に力無く腰掛けて呟いた。 「一、何調べてんの。」 トラックパッドの上に指の腹を滑らせ、ページをスクロールしている。堀内は画面から目を離すことなく言う。 「Twitterで良い除霊の方法を募ってみたんだ。効果的な内容が返ってくればいいんだけど。」 濃密な非日常のせいで、身近だったものを忘れていた。堀内はインターネット上での友人が多い。確かTwitterのフォロワーは2000人を超えているはずだ。もしかしたら何かしら有益な情報が手に入るのかもしれない。そんな希望的観測を抱いた久保田は携帯灰皿にタバコを落とし込んで立ち上がった。顔を覗かせるようにして堀内の背後に回る。白い画面に無数の文字、虹色のアイコンが並んでおり、2本指を滑らせて画面がスライドしていく。しばらく画面に目をやって、堀内はとある文章に目をつけた。 「これ、有効かも。」 細い指先に浮かぶ文章には、140字ぴったりにまとめられた除霊の方法が長文で記載されていた。 『日本人形を発見次第紐、紙で人形を拘束。それに酒をかけて清めさせ、部屋の中央に置く。それを囲むように酒を垂らして星の形を作る。燃える物があれば角に立てて火をつける。そして「否虚之実禅巫為」と唱える。やがて、それを終えたら紙に「塞」と書きそれを貼り付けて、乾いた木の枝と共に焼却する。』 全てを読み上げて、堀内は小さく息を吐いてこちらを振り向いた。冷静なまま、というわけではない。真剣な表情の裏で恐怖という感情が湖の下を這う水底生物のように畝っている。心霊に関する知識があろうが堀内も恐れているのだ。少しだけ唇を震わせて言う。 「恭介、これ準備できる?」 肯定、否定の言葉を口にする余裕すらなかった。もしかしたらこの状況を打破できる一手なのかもしれないのである。堀内の目を見て一度だけ頷き、久保田は他の3人にこの事実を伝えた。
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