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“__……子供にもしも暴力を振るったら、あんたのこと呪い殺してやるんだからっ”
最後の遺言が呪い殺すだなんて、母親の覚悟を見せつけられた気がした。
それまでは、あいつが母親の顔になるのが気に入らなかった。
だって、あいつには俺しかいなかったのに急に部外者が入ってきたようなそんな感覚に陥っていた。
だけど、最後に自分の命を犠牲にしてまで子供を守った姿はただただ神々しくて、その瞬間自分の愚かさに気づかされた。
「お父しゃん。お母しゃんがいなくて寂しい?」
不安そうに尋ねてくる共生を、俺はいつもと同じようにギュッと抱き締める。
「寂しくないよ。俺には共生がいるから」
「本当? 僕もお父しゃんがいるから寂しくないよ。お父しゃん大好き」
と、抱き締め返してくれる小さな熱を俺はこれからも守っていく。
だけど一つ、あいつに謝らなければならないことがある。
それはこの子に、一人でも生きていけるようにと「一生」と、名付けようとしていたことを知りながら勝手に「共生」と名付けたこと。
「……お父しゃん?」
墓前から動かない俺に首を傾げる共生を抱き上げると、丘の下へと沈む夕日が見えるように肩車をする。
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