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夕食を済ませると自室に籠ったままの彼には何も言わず、厚手のコートを羽織り首にマフラーを巻くといつものように気分転換に散歩へと出かける。
しかしマンションのエレベーターで乗り合わせた、仲睦まじいご夫婦の姿にもやもやとした感情が募る。
旦那さんの腕に大事そうに抱かれた赤ちゃんと、その隣で優しく微笑む奥さん。
__理想の家庭。
__理想の家族。
エレベーターの扉が開くと、私はまるで逃げるように小さく駆け出した。
……どうして、和君は変わってしまったのだろうか。
以前は私の作った料理を何でも美味しいと言ってくれたし、家事だって率先して手伝ってくれた。
休みの日は二人で一緒に出掛けたり、私達は上手くやっていたはずだったのに……。
いつからか彼は仕事ばかりになって、何か気に入らないことがあるとすぐ私に当たるようになった。
だけど……。
私さえ我慢すれば、この子さえ生まれてくればきっと理想の家庭が築ける。
そっと立ち止まると、お腹を擦りながら夜空を見上げる。
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