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2人で両手を合わせれば
線香の匂いが鼻をつく。
匂いは記憶を呼び寄せるもので、胸がキリキリと痛む。
ぎゅっと強く目を閉じると背中に暖かな心地がして、なんだか不思議と父を感じた。
はっと目を開ければ、隣でロイが俺の背を摩ってくれていた。
「私がいますよ」
そのロイの言葉でおそらく数ヶ月ぶりに
泣いた
馬鹿みたいに
赤子のように
喚いた
ああ、泣けなかったんじゃなくて
堪えてたんだな。
頑張らなきゃ
しっかりしなきゃって
耐えて耐えて
辛かった
苦しかったんだ
ロイに抱きしめられ
その中に父の温もりを感じて
ただ俺は
ひたすらに泣いた
「ありが…とう」
親父、ありがとう
ロイに出会わせてくれてありがとう
俺を育ててくれて
だれよりも理解してくれて
ありがとう
涙が枯れるまで
ロイは傍にいてくれて
この温かさにずっと浸りたいと思った。
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