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ーもしお前が1人残されても、孤独を感じないで欲しい。 いつだって心はそばにいるんだ。…なんて言ったって精神論でしかないかもしれない。1人は1人なんだ。 だけどさ、綺麗事じゃなくて本当に心はそばにいると思ってる。お前もそうだと嬉しい。 それでも、お前が社会に溶け込むまで、大人になるまで、見守るために作ったんだ。 …ロイは、父さんでも母さんでもあるんだ。 見つけてくれたかな。 お前は大丈夫 だって俺の息子だから。 ・・・ ロイが停止して俺は再び空っぽになった それでも世界は回り続けて止まらなくて だから俺も止まっている訳にはいかなくて 就職して、穢れた社会に飲み込まれて揉みくちゃにされながら生きていた。 生物的に生きていても社会的に死んでいた ただ、生きる理由がひとつだけあって だから死ぬ訳にも行かなかった。 AIと人間の共存は現実味を帯びてきている 父が残したROYの存在もあり、父の周りでAIの研究が進んでいた。 俺は、ロイを生き返らせなければならない ちなみにこれが俺の生きる理由ではない そのための一歩に過ぎない 悲しみに暮れている暇はなく 悲しみの体勢もつけて 気づけば俺はまた数年涙を流さなくなった ある意味俺は 俺の心は ロボットのようだった ただ淡々と目の前の事をこなし 感情に揺さぶられるどころか 楽しいとも 嬉しいとも 悲しいとも 思わなくなっていた 職場の人も奇妙に思っていたかもしれない 言われたことを何でもこなす辺りは都合よく使えるからどうってことない けれどロボットのプライベートに付け込む壁を破る人は現れず 孤独を貫いた 父の周りの科学者達と試行錯誤 切磋琢磨 新しい世界を作り出していた。 多忙な日々でも 必ず週に一度は父と母に会いに行った。 今日も生きていますと 父の見据えた世界が近くに見えていると 報告して 力を貰っていた。 仕事を終えては父の作業場を借りて作業に没頭する毎日。 時折、自分は何がしたいのか彷徨いながら まだ まだ 目標には程遠い もっと もっと 頑張れ自分 そう言い聞かせて 孤独の音の中で 淡々と。 ガシャンと音を立てて手元の器具が床にバラける。 はやく 終わりにしたい 本当は 心が悲鳴を上げていた 誰か壁を破ってくれ 俺は孤独が嫌いなんだ 怖いんだ 孤独に慣れるわけなんかないんだ だれか、聞いてくれ 俺の声を 俺の世界を 見てくれ 誰か 誰か そう叫ぶ心に蓋をして 考えないように 囚われないように 作業に没頭した 俺は誰なんだ 俺は何なんだ そんな葛藤いらない 消えてくれ 俺は 俺は 寂しい
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