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「疲れた~」
自宅に戻り部屋のベッドの倒れ込む。聖子のショウ君に対しての愚痴を一晩中聞かされた。
私に愚痴って、それで気持ちが軽くなるのならいくらでも聞こうと思っていた。
でも、途中から何故かのろけに変わり、二人きりになった時にとても優しかった話になり、危うくベッドシーンの話になりそうでアワアワしてしまった。
そりゃ、ショウ君はカッコイイかもだけど、二人っきりの時のショウ君って、ショウ君の偽物の話で……。優しくされているうちに、ショウ君本人では無く、ショウ君の偽物の事を好きになってしまった様子だった。
好きという気持ちは自分の事なのに自分で制御出来ない不思議な感情だ。
聖子のことを思うと胸が痛むが自分には、何もしてあげられない。
「はぁ。報われない恋って辛いな」
ショウ君とショウ君の偽物、そして聖子。
この事で、私の頭の中はいっぱいだった。
そして、一晩中、聖子と話をしていたので、いつの間にか眠りに落ちていた。
「千鶴 」
陽明の声で目覚め、眠い目を擦りながらベッドから起き上がる。
「ごめん。寝ちゃっていた。出かけさせてくれて、ありがとう。ショウ君にも会って来たよ。聖子の話もいっぱい聞いた」
「そうか、がんばったな」
陽明が、そっと抱きしめてくれる。
ウッディなラストノートの香りが落ち着く。
「ん? 首のところ赤くなっている」
陽明が、私の首筋を指差す。
「そうなの。聖子にも言われたんだよね。虫さされだと思うけど、虫の季節でもないし、痒くもなくて謎なの」
陽明が、なにやら考え込んでいるように見えた。
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