881人が本棚に入れています
本棚に追加
王陽明は、スマホで誰かと連絡を取っていた。その内容は中国語で何を話しているのか千鶴には全くわからない。
── 今、名前を聞いた人と本当に結婚するなんて信じられない。
でも、結婚届けにサインしないと死ぬって言われたら、取り敢えずサインをしなければならない。命あっての物種ですからなるようになるでしょう。
ハァ。ため息一つ。
王陽明の電話はまだ終わりそうもなくて、婚姻届に名前を書き入れてしまった千鶴は手持ち無沙汰。暇なので婚姻届をまじまじと眺めていた。
──王 陽明さんの生年月日が入っている。
ふーん、私より結構年上なんだ、
31歳かー。ふーん。
王陽明さんか、正に王者の風格。
王様、ピッタリじゃん。
私なんかと結婚……。
なんで私の事脅してまで、なぜ結婚なのか?
わからないけど、王様、絶対モテるよね。
お金持ちそうだし、イケメンだし、結婚したいなら他にいくらでも良い人がいただろうに。
って、いうか、
この手錠って何時になったら外してもらえるのかな?──
王陽明は窓の外を見ながら中国語で電話相手と会話をしていた。
── はぁ〜! 電話終わらないし、声も掛けにくい、トイレに行きたいのに困る。
千鶴は、ソファーからそっと、立ち上がりフカフカの絨毯を踏みしめた。広い部屋の一角にあるドアにようやく辿り着き、ドアノブに手を掛け開けようとした。
「你要去哪里!不要采取任何行动!」
王様の大きな声が聞こえ、ビクッと身をすくめて振り返る。
最初のコメントを投稿しよう!