好奇心は猫をも殺す

7/10
前へ
/299ページ
次へ
王陽明は、スマホで誰かと連絡を取っていた。その内容は中国語で何を話しているのか千鶴には全くわからない。 ── 今、名前を聞いた人と本当に結婚するなんて信じられない。  でも、結婚届けにサインしないと死ぬって言われたら、取り敢えずサインをしなければならない。命あっての物種ですからなるようになるでしょう。  ハァ。ため息一つ。  王陽明の電話はまだ終わりそうもなくて、婚姻届に名前を書き入れてしまった千鶴は手持ち無沙汰。暇なので婚姻届をまじまじと眺めていた。  ──王 陽明さんの生年月日が入っている。  ふーん、私より結構年上なんだ、  31歳かー。ふーん。  王陽明さんか、正に王者の風格。  王様、ピッタリじゃん。  私なんかと結婚……。  なんで私の事脅してまで、なぜ結婚なのか?  わからないけど、王様、絶対モテるよね。  お金持ちそうだし、イケメンだし、結婚したいなら他にいくらでも良い人がいただろうに。  って、いうか、  この手錠って何時になったら外してもらえるのかな?──  王陽明は窓の外を見ながら中国語で電話相手と会話をしていた。 ── はぁ〜! 電話終わらないし、声も掛けにくい、トイレに行きたいのに困る。  千鶴は、ソファーからそっと、立ち上がりフカフカの絨毯を踏みしめた。広い部屋の一角にあるドアにようやく辿り着き、ドアノブに手を掛け開けようとした。 「你要去哪里!不要采取任何行动!」  王様の大きな声が聞こえ、ビクッと身をすくめて振り返る。  
/299ページ

最初のコメントを投稿しよう!

881人が本棚に入れています
本棚に追加