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ところどころ錆の浮いた金網に手をかける。
指の間のやわらかい皮膚を、ざりざりとした金属がやさしく傷つけた。
視界には遮るものがなくなった学校の景色が広がっている。
普段よりずっと高い位置から見る風景は、ミニチュア模型のようでどこか現実味がない。
綾斗はコンクリートの地面を蹴って宙を翔んだ――。
体の中で内臓がぷかぷかと浮かびあがるのを感じる。
ずっと憧れていたものが、やっと手に入る……。
そう思うと同時に、綾斗は一瞬だけ思ってしまった。
『やっぱり死にたくない』
一滴こぼした墨が、あっという間に周囲を黒く染めるみたいだ。
急にすべて取り消したい気持ちに襲われた。
でも、あまりに遅すぎる。
もうどうにもならなかった。
綾斗の目の前に一面の土色が広がる。
ぷつんと電源が落ちるように、あっけなく暗幕は下げられた――。
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