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*** ――真っ暗で何も見えない。 電子的な音が定期的に耳元で鳴っている。水を吸った服でも着ているみたいに、ひどく身体が重かった。 生きるってこんなにも重たいのか。と綾斗は思った。 ぼやけた視界の先に、今にも泣き出しそうな両親の顔が見える。二人は必死に自分の名前を呼んだ。 『綾斗』と。 今度は、アヤトの代わりでなく、アヤトの分まで―― 土を掴むように。綾斗はゆっくりと、強く手を握りしめた。
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