3人が本棚に入れています
本棚に追加
***
――真っ暗で何も見えない。
電子的な音が定期的に耳元で鳴っている。水を吸った服でも着ているみたいに、ひどく身体が重かった。
生きるってこんなにも重たいのか。と綾斗は思った。
ぼやけた視界の先に、今にも泣き出しそうな両親の顔が見える。二人は必死に自分の名前を呼んだ。
『綾斗』と。
今度は、アヤトの代わりでなく、アヤトの分まで――
土を掴むように。綾斗はゆっくりと、強く手を握りしめた。
最初のコメントを投稿しよう!