多重結婚

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「生ビールはやめて麦焼酎のロックにする」 「あ、じゃあ、俺も同じのにします」  昼の酒は回るというが瑠々も岩崎くんもベロベロになった。岩崎くんはトイレに行くのにあっちにぶつかりこっちにぶつかりしている。瑠々もトイレに立ったときふらっとよろけて岩崎くんに抱き着いてしまった。大きい胸が岩崎くんの顔に当たる。 「このままじゃダメですね。どこかで休みましょうか」 「休むって?」 「ラブホテルに行きましょう。大丈夫。これだけ酔ってるんだから何もしませんよ。まだまだ話したいこともあるし、ゆっくり出来る場所の方がいい。そう思いませんか?」  ラブホテルに行くのは危険だと瑠々は思うが二股をかけられた屈辱でちょっと仕返ししたい気分になっている。本当に二股かどうか分からないが、酔っているせいで正常な思考回路ではない。でも…… 「私、ラブホテルって行ったことがないんですよ」 「カラオケ屋さんにいるのと同じです。カラオケやゲーム機があるんですよ」  それが本当なら行ってもいいかな。瑠々は「いいですよ」と言った。  駅の南口には古いラブホテルが一軒ある。二人はそこへ向かった。空き部屋は3つあった。休憩が6000円、ちょっと休むだけでこんなに取られるのかと二人は思った。だって古びたあまりキレイじゃないホテルだ。たぶん立地がいいからやっていけているんだろう。6000円か。だがここまで来て帰るのもどうかと思う。パネルで部屋を選んで三階へ行く。エレベーターを降りた横にはボールに入った入浴剤が取り放題で置いてあった。瑠々が嗅いだことのない独特の匂いがする。
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