48人が本棚に入れています
本棚に追加
デニムをはいてマンションを出る。雨が降っているから、万が一のときの為に買っておいた透明の傘を山辺さんに渡した。瑠々はデパートで買った赤に小花の模様がプリントされてる傘だ。
二人でジョナサンに向かう。細い路の両側は商店街で八百屋に魚屋、古本屋なんかもある。普段はワゴンで古本を外に出して売っているのだが今日は雨だからガラス戸が閉まっていて人の気配がない。
「瑠々ちゃんは本が好きでしょう。部屋にいっぱい本があったもんね」
「はい。ミステリー小説が好きなんですよ」
「映画もミステリーっぽいのがいいのかな?」
「そうですね。今、どんなのやってるか分からないんですけど、ふふ」
「ちょうどいい、ホラー系のサスペンス映画がやってるよ。夏だからちょっと怖いのがいいか」
山辺さんは楽しそうだ。これから会社の皆んなに会うのに何を話すか決めているのだろうか。
ジョナサンに着く。ガラスの扉を開けて中に入ると店員さんが出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ、何名様ですか?」
「待ち合わせなんです。他のメンバーはもう来ているはずなんですが」
瑠々は店内を見回した。所長たちが4人掛けの席に三人で座っていた。所長と岩崎くんともう一人地味な佐藤さん、他の人は帰ったんだろう。山辺さんも三人の姿に気が付いた。
「ああ、いた、いた。あと二人は座れないな。横の席に座ってもいい?」
横の4人掛けの席も空いている。店員さんが「どうぞ」と言って案内してくれた。
最初のコメントを投稿しよう!