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「本当に一緒に居たんですね。こう言ったらなんですけど、山辺さん、二股かける気じゃないんですか?」
岩崎くんが噛みつく。瑠々を取られたから負け惜しみを言ってるんだろうが棘がある。
「そんなことはしないよ。岩崎くんだって最初は永田さんがいいって言ってたろ、永田さんに彼氏がいると知って気持ちを変えたんじゃないか」
「やっぱり瑠々さんがいいって気が付いたんです。包容力がある」
瑠々は自分がデブだと言われているような気分になった。
所長はこのやり取りを聞いて、指をおでこにつけ思案している。瑠々がまさかこれほどまでモテるとは思ってなかったんだろう。それもそうだ。だって体重75キロ、いや78キロの柔道の黒帯なのだから。瑠々本人だって昨日から夢を見ているようだ。
水が運ばれて来た。瑠々はそれを飲んで口を潤した。
「岩崎くんの気持ち、すごく嬉しいけど、私は山辺さんと付き合い始めたの」
「俺とも付き合ってくださいよ。結婚だって多重結婚が認められたじゃないですか」
山辺さんはそれを聞いてちょっと怒った。
「多重結婚なんかさせないよ。子供が出来たって誰の子か分からなくなるじゃないか」
確かにそれもそうだ。でも話が飛躍しすぎてる。
「テレビを観なかったんですか?多重結婚した女性が子供を産んだときはDNA鑑定が無料で受けられる制度になったんですよ」
DNA鑑定が受けられれば誰の子かはハッキリする。だけど五人と結婚したとして五人の子供を産むのは容易ではないだろう。まあそんなに大勢と結婚する人も少ないと思うが。
「瑠々さん、俺とも付き合ってください」
岩崎くんは頭を下げる。
「そんなこと出来ないですよ」
「じゃあ、俺ともカラオケ行ってくださいよ。カラオケに行った時点では付き合ってなかったでしょう。フェアな状況で負けるんだったら分かります」
瑠々は困った。カラオケに行ったところで山辺さんが好きな気持ちに変わりはない。だってその前からいいなって思っていたのだから。
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