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「本当にかわいい。娘だと思うとなおさら」 「だい…」 大貴の視線はゆずきに向かったまま。 私に向かっての台詞なら、何かしらの反応ができたけれど、誰に聞かせるでも無く話している彼を見ると、私は次の句が出てこなかった。 「正直、昨日ホテルに帰ってから考えた。 何で離れられたんだろうって。昨日も色々言い訳した癖にな。短い時間だけど、ゆずちゃんと過ごして、みおちゃんが母親になっているのを見て、何で俺だけここにいないんだろうって」 「大貴…」 胡座をかいた大貴の丸めた背中が、小さく見える。 「俺、自分の事ばっかりだったよな。同棲だって、俺から言い出したのに、色々言い訳して1人になった。でも、2人の成長を見られないのが…いや、俺も父親としてみおちゃんを支えられないのが本当に辛いんだ」 大貴が自分の気持ちをこんな風に話してくれるなんて、初めてかもしれない。 「私だって、自分勝手な感情で突っ走ったんだから、お互い様だよ。私の意地っ張りは大輝も知ってるでしょ?あの時は、お互いがお互いの気持ちを勝手に想像してたよね」 子はかすがいとはよく言ったもので、娘がいなければこんな風にお互いの気持ちを聞く事もなかっただろう。 「みおちゃん」 大貴が顔を上げる。正座をし居住まいを正した。 「俺をゆずちゃんの父親として2人の人生に関わらせて。結婚できたら1番いいと思ってる。でも、養育費でもどんな形でもいいから」 「……え」 何? 結婚? 養育費? いきなり出てきたことばに頭が真っ白になった。 プロポーズされたの? でも、最後の方は何だか違う話になってしまって、どう返事をしたらいいのか混乱する。 「急に…びっくりした」 3年前、あれほど欲しかったことばなのに。 今は素直に喜べない。 硬くなってしまった心は、そんなに簡単に人と寄り添う事を受け入れられない。 「答えは急がない。自分勝手だって分かってるから。ゆっくり考えて」
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