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「おはよう。ゆずちゃんの熱はどう?」
11時。インターホンが鳴った。
年末のこんな時間に我が家を訪ねてくる人なんて、1人しかいない。
通話ボタンを押すと、画面越しに大貴が当たり前のように立って話しかけてくる。
昨日のポトフで朝ごはんを済ませ新しいパジャマに着替えた娘は、ままごとの真っ最中で、部屋中に果物やら野菜やらが転がっている。
私が無言で玄関を開けると、大貴は両手に食材を持って、違和感なく部屋に入ってきた。
「だいちゃん、来たー。今日は、ご飯作ってあげるね」
「おー、それは頼もしい。でも、ゆずちゃんは料理の前に熱測った?」
キッチンに入りながら、ゆずきに返事をする大貴。慌てて、私が返事をした。
「朝だからかな、今は7度台に下がってる」
「そっか。昨日より元気そうで安心した」
その時ゆずがおもちゃのお盆に食パンとおにぎりをのせ、キッチンにやってきた。
「だいちゃん、おにぎりとパン、どっちがすき?」
「んー、もうすぐお昼だからおにぎりかな。だいちゃんも、ご飯作るぞー」
「ゆずもおいしいご飯作るぞー」
「お母さんより頼もしいなぁ」
2人の間でぽんぽん進んでいく会話に、口が挟めない。これが血の繋がりというものか。
丁度、洗濯が済んだ音がして脱衣所へ行く。洗濯物をあけながら、どうしたもんかと逡巡した。
今は看病という名目があるものの、さすがに年末年始は帰省するだろうし、仕事は神戸なのだから居座りはしないだろう。
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