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ベランダに出るついでに換気をしようと、窓を大きく開けた。 「おかーさん、寒いー」 「だーめ。空気を入れ替えます!」 今日の予想最高気温は12度。 朝キリッと冷えていた空気も少し和らいでいる。それでも、すぐにかじかんでくる指先を必死に動かして洗濯物を干した。 大貴が彼のしたいようにしてくる以上、あれこれ考えても仕方がない。 あと1週間もして仕事が始まれば、すぐに日常が戻ってくる。しばらく会わなければ、ゆずも大貴の事を忘れるだろう。 「洗濯終わったよ。今日のお昼ご飯何かなぁ〜」 窓を閉めて、お皿に半分に切られた魚やリンゴやプリンを山盛りにのせているゆずに話しかけると、 「今、おかあさんのご飯ないです!わたし、ちょっと忙しいの」 と、呆気なく振られてしまった。 「お母さんもお腹すいたなぁ」 「これはだいちゃんの。おかあさんは、だいちゃんにもらって」 私は、昨日初めて会ったばかりの大貴に完全に敗北してしまったようだ。 元気なのは良いことだけど。 仕方なく特番ばかりになってきたテレビをつけて、一通りチャンネルを変える。 今日は29日。 大貴は最寄りのターミナル駅近くのホテルに宿泊していると言っていた。明日には大貴は帰省してここを離れるんだろうか。 たった半日で、と思う。 たった半日いただけなのに、大貴にこの部屋が馴染んでしまった。 ほだされないように決意がいるぐらいに。 「みおちゃん。昼は簡単にうどんにしたけど、もう作っていい?」 どうやら、再放送のドラマを見ながらぼーっとしていたらしい。キッチンから聞こえた大貴の声に我に返った。 「え?あ、うん」 「ゆずもちゅるちゅる好きー」
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