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「すぐできるよ。2人とも手を洗っておいで」
その声にパッと反応する娘。
私の言う事は聞かない癖に、なんて思いながら私も洗面台に向かう。
「ねえ…実家にはいつ帰るの?」
うどんを食べ終わった後、2人で洗ったお皿をしまいながら私から切り出した。
「明日から二泊で帰るよ」
「そっか」
──あれ?
大貴の返事を聞いた瞬間、分かっていたはずなのに、一瞬、胸に感じたつきんという痛みに自分で驚く。
「うん。もう一回買い物に行こうと思ってるから、いるのも書き出してくれる?」
「あ、お金。食費」
慌てて付け足したので、口から出た言葉は文章の体をなさなかった。
それに今、なんとなく大貴とはお金の話をしにくいのだ。
「いいよ。おれがやりたくてしてることだから。ゆずちゃんが元気になったら美味しいものでも食べさせてあげて」
「…うん。ありがとう」
大貴がお金を受け取らないことは分かっていたので、粘る事はしなかった。
食後に検温すると、やはり午後から少し熱が上がったゆずきに昼寝をさせるべく布団へ誘う。
元気そうにしていても、やはり身体は辛いのだろう、休日はお昼寝をしない事もあるが、長座位になった私の足の間に入る定番の形ですぐに寝始めた。
寝入ってしまうまで動けないので、スマホでニュースを流し読みしていると、大貴が近寄ってくるのがわかった。
布団の横に胡座をかいて座ると、優しい眼差しでゆずきを見ながら、娘の頭をゆっくり撫でている。
その光景に何も言えずにいると、ボソリと彼が呟いた。
「ゆずちゃん、かわいいな」
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